"支援"は終わった。"共犯"の時代へ — 新規事業支援の構造的限界と、その先

"支援"は終わった。"共犯"の時代へ — 新規事業支援の構造的限界と、その先

コンサルティング、アクセラレーター、メンター制度——既存の新規事業「支援」モデルには構造的な限界がある。その先にある「共犯」という関係性とは。

新規事業支援 共犯者 コンサルティング 構造改革

3,000万円のコンサル費用で手元に残ったのは報告書だけ

新規事業を立ち上げようとするとき、多くの企業が外部の力を借りる。コンサルティングファームに戦略立案を依頼し、アクセラレータープログラムを導入し、メンターを招聘する。しかし、その結果に満足している企業はどれほどあるか。

ある調査によれば、コンサルティングファームの新規事業支援プロジェクトのうち、実際に事業化まで至ったものは全体の15%以下だ。残りの85%は、美しいスライドと詳細な分析レポートが納品された時点で終わる。3,000万円の予算を投じて手元に残ったのは300ページの報告書——そんな経験を持つ企業は少なくない。

問題は支援者の質ではなく、「支援」というモデルそのものの構造にある。支援者は外側からアドバイスを提供するが、実行の責任は負わない。計画と実行の間にある深い溝を、誰も埋めない構造だ。

100社に関わり、事業化はわずか4社だった

筆者自身、新規事業のコンサルタントとして7年間で100社以上のプロジェクトに関わってきた。市場調査、事業機会の特定、ビジネスモデルの設計、ロードマップの策定——教科書通りのプロセスを丁寧に実行し、クライアントには高い評価をいただいた。NPS(推奨度スコア)は常に80以上だった。

しかし、3年目のある日、過去の支援先50社のその後を追跡調査してみた。結果は衝撃的だった。事業化に至ったのはわずか4社。残りの46社は、プロジェクト終了後6ヶ月以内に活動が停滞していた。理由を聞くと、判で押したように同じ答えが返ってきた。「社内の承認が下りなかった」「担当者が異動した」「既存事業部の協力が得られなかった」。

いずれも組織構造の問題であり、外部からのアドバイスでは解決できない類のものだった。支援者としての自己評価と、実際の事業成果の間に巨大なギャップがあることを認めざるを得なかった。

「支援」を超える「共犯」という関係性

支援モデルの限界を突破するには、関係性そのものを再定義する必要がある。筆者はそれを「共犯」と呼んでいる。

リスクを共有する構造を作る

支援者の報酬を固定フィーから成果連動型に切り替える。事業化に至らなければ報酬が発生しない仕組みにすることで、支援者と事業者の利害を一致させる。筆者の場合、固定報酬を従来の30%に抑え、残り70%を事業化後の成果報酬にした結果、事業化率は8%から35%に向上した。

組織の内側に常駐する

週1回のミーティングではなく、週3日以上クライアントのオフィスに常駐する。経営会議に同席し、社内の承認プロセスを共に走り、反対勢力との交渉にも立ち会う。外側からの助言ではなく、内側からの共闘だ。

「アイデア」ではなく「組織構造」に介入する

ビジネスモデルの設計ではなく、意思決定プロセスの改革、評価基準の再設計、人事配置の最適化といった構造そのものに介入する。アイデアが育つ土壌を耕すこと——それが共犯者の本質的な役割だ。

来週の会議から試せる3つのステップ

共犯関係への転換は、大規模な制度改革なしでも始められる。 まず、外部パートナーとの契約形態を見直す。 現在の支援契約に成果連動条項を追加できないか、次回の契約更新時に提案する。「事業化フェーズに進んだ場合にボーナスを支払う」という条項を1つ加えるだけで、パートナーの関与度は劇的に変わる。

次回の外部ミーティングに社内の意思決定者を同席させる。 コンサルタントやメンターとの打ち合わせに、承認権限を持つ上長を巻き込む。支援者が組織の内部事情を理解し、意思決定者が外部の知見に触れる場を作れば、計画と実行の溝が縮まる。

支援者に「率直な現状評価」を求める。 「自社のイノベーション活動を10点満点で評価するなら何点か、理由は何か」と聞いてみる。外部の目による冷静な診断が、構造的問題の発見につながる。この3つは今週中に着手できる。

「共犯者」を必要としている組織の特徴

本記事が最も刺さるのは3種類の人だ。

外部コンサルやメンターを起用しているが成果に疑問を感じている新規事業責任者。 支援者の質が問題なのではない。「支援」というモデルの構造的限界を理解することで、パートナーとの関係性を再構築するヒントが得られる。

コンサルタント・メンターとして新規事業支援に関わっている専門家。 自分の支援が「シアターの一部」になっていないかを点検し、より深い関与モデルへ転換する指針として読んでほしい。

経営企画部門で外部パートナーの選定・管理を担当している人。 契約形態や関与度の設計を見直す際の判断基準として、ここで論じた「共犯」の考え方が使える。外部パートナーを一切使わず社内リソースだけで新規事業に取り組んでいる組織には、本記事の問題提起は直接当てはまらない。

パートナーに投げかける、たった一つの問い

共犯関係の構築は、一つの問いから始まる。次回、コンサルタントやメンターとの会議がある際に、こう聞いてみてほしい。「もし報酬の半分が事業化の成否に連動するとしたら、今の支援内容を変えるか。変えるとしたら何を変えるか」。この問いへの反応が、パートナーの本気度を測るリトマス試験紙になる。歓迎する相手は共犯者候補だ。渋る相手は、支援者のままでいたい人だ。

社内に対しても同様の問いが有効だ。「この新規事業が失敗した場合、誰がどんなリスクを負うのか」。全員が「特にリスクを負わない」と答える状態であれば、共犯者不在の組織だ。構造を変えるには、まず誰かがリスクを負う覚悟を示す必要がある。

INNOVATION VOYAGEでは、新規事業の構造的課題について継続的に発信している。構造変革の具体的なヒントが必要な方は、お問い合わせページから気軽にご連絡いただきたい。


参考文献

  • Saras D. Sarasvathy, Effectuation: Elements of Entrepreneurial Expertise, Edward Elgar (2008)
  • Rita McGrath & Ian MacMillan, “Discovery-Driven Planning,” Harvard Business Review (July–August 1995)
  • 経済産業省「未来2023 新しい産業政策について」(2023年)

INNOVATION VOYAGE 編集部

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