「価値提案」を設計するための設計図
バリュー・プロポジション・キャンバス(Value Proposition Canvas、VPC)は、Alex Osterwalder、Yves Pigneur、Gregory Bernarda、Alan Smithが2014年の著書Value Proposition Designで体系化したフレームワークだ。ビジネスモデルキャンバス(BMC)の「顧客セグメント(CS)」と「価値提案(VP)」の2ブロックを、それぞれ詳細に分解して対応させるための補完ツールとして設計された。
BMCを「事業の全体構造」を一枚で見るためのツールとすれば、VPCは「顧客と価値提案の関係」を深く設計するためのツールだ。
2つの構成要素
Customer Profile(顧客プロファイル)——右側の円
顧客セグメントを3要素で分解する。
Jobs(ジョブ): 顧客が達成しようとしていること。機能的ジョブ(具体的なタスク)、感情的ジョブ(どう感じたいか)、社会的ジョブ(どう見られたいか)の3種類がある。Jobs To Be Done理論と直接接続する。
Pains(ペイン): ジョブを達成しようとする際の障害・困難・リスク。コスト・時間・感情的な摩擦など。
Gains(ゲイン): 顧客が望む成果・恩恵。機能的なメリットから感情的な満足まで。「あると嬉しい」から「必須」まで重要度の差がある。
Value Map(バリューマップ)——左側の四角
自社の提供物を3要素で記述する。
Products & Services(製品・サービス): 顧客にジョブを達成させるために提供するもの。
Pain Relievers(ペインリリーバー): 顧客のPainをどのように軽減するか。全てのPainに対応する必要はなく、重要なPainに絞ることが設計の基本だ。
Gain Creators(ゲインクリエーター): 顧客のGainをどのように生み出すか。機能・利便性・感情的な満足を通じて、顧客が望む成果を実現する方法を記述する。
フィット(適合)の概念
VPCの核心概念は「フィット(Fit)」だ。顧客プロファイルのJobs/Pains/GainsとValue MapのProducts/Pain Relievers/Gain Creatorsが対応していることを「フィットが取れている」と言う。
Osterwalderはフィットを3段階で定義している。
- Problem-Solution Fit: 顧客の課題(Pains)と自社の解決策(Pain Relievers)が対応していることを仮説レベルで確認した状態
- Product-Market Fit: 実際に顧客が製品を使い、価値を感じていることをデータで確認した状態
- Business Model Fit: PMFが達成され、それがスケーラブルな事業モデルと結びついていること
VPCは特にProblem-Solution Fitの探索と設計に最も有効だ。
BMCとの使い分け
BMCの「価値提案」ブロックに「業務効率化」と書いて終わっているなら、VPCを使ってその一行を分解する必要がある。顧客のどのJobsに対応し、どのPainsを軽減し、どのGainsを生み出すかを明示することで、「本当に顧客に刺さる価値提案」の設計精度が上がる。
関連するインサイト・用語
参考文献
- Osterwalder, A., Pigneur, Y., Bernarda, G. & Smith, A. Value Proposition Design: How to Create Products and Services Customers Want, Wiley (2014)(邦訳:『バリュー・プロポジション・デザイン』翔泳社)
- Osterwalder, A. & Pigneur, Y. Business Model Generation, Wiley (2010)(邦訳:『ビジネスモデル・ジェネレーション』翔泳社)